地平線の向こうへ

歩くことは、私にとって試練だった。
痛みはすぐにやってきて、わずか数分で足が重くなる。
十分なんて、遠い夢のように思えた。

けれど、あの日、友人が笑って言った。
「十分しか歩けなかった、じゃなくて、十分も歩けた、って言ってみなよ。」

不思議だった。言葉を変えただけで、胸の奥に小さな灯がともった。
次の日、私はまた歩いた。昨日より一歩だけ多く。
その日も、私は笑って言った。
「今日は十一分も歩けた。」

視点を変えた瞬間、世界は一気に広がった。
そして十一分が、私を地平線の向こうへ連れ出した。
澄み渡る地平線は、どこまでも果てしなかった。
いつしか、私は走り出していた。